45. ほうおう座 Phoenix

鳳凰座  Phoenix

動揺する蝶  Disquiet Butterfly


《銀河巡礼〜赤道の星空》について

 星空全体は 88の星座によって分割されています。これまでと同様、この曲集も 22の星座から成り、これらの星座は赤道周辺から見ることができます。音楽のインスピレーションを得るために、私は光害のない赤道近くの国々への旅を計画し、2011年秋にエジプト、2012年春にインド南部を訪れました。さらに日本、ギリシャ、カナリア諸島(スペイン)、中国、そしてバリ島の文化について見識を深める中、星空の伝説を入手することができました。音楽語法はアラブ風なもの(和声短音階および長音階)、日本、中国、インドの五音音階、増減四度や二度、その他、特殊な響きなど、まるで蝶のごとく色鮮やかです。物語において最も重要なのは、瞑想や暗示、原初的な力、宇宙的エネルギーや色調といったものです。この曲集は日本の文化的空間に私の名を刻んだ二人のピアニスト、吉岡裕子と秋場敬浩に捧げられています。
 赤道の星座の名前の多くは、1751年から 52年に喜望峰に滞在していたフランスの天文学者ラカイユによって命名されました。これらの星座は天に引き上げられた様々な物や道具に関連づけられています。例えば、実験に使う溶融炉、彫刻具、望遠鏡、顕微鏡、六分儀、ポンプ、カップ(盃) 、楯、羅針盤、定規、そして画架(イーゼル)、彫刻室もそれに該当します。 赤道近くの土地でも、世界の創造に関するさまざまな伝説が伝えられました。特にエキサイティングな物語は、古代中国、インディアンの祖先、ヒッタイトとフルリの文化から来ています。これらの伝説は、星空と星座がどのようにして生まれたのか、暗闇から光がどのようにやってきたのか、生き物がどのように視力を得たのかについて語っています。 
                                                                                                    
 上記は、シサスクによる《銀河巡礼〜赤道の星空》序文です。
 いざ「赤道の星空」へ!

 天体観測をする人にとって赤道直下は特別な場所です。なぜならそこは 88星座すべてを一望できるからです。北の地平線近くに北斗七星が見える時、振り返って南の地平線を見ると、みなみじゅうじ座が見えるということになるわけで、想像するだけでもわくわくします。

 シサスクは赤道から見える星座について、これまでの曲集とは異なり、位置関係を曲順のみならず、「蝶」や「狼」を含んだサブタイトルを使うことによっても表わそうとしました。(詳しくは吉岡裕子のCD「銀河巡礼〜赤道の星空」ライナーノーツをご覧いただきたいと思います。)ここではこれまで通り、それぞれの星座にどんな天体が潜んでいるのかを見ていく中で、サブタイトルの意味するところについても深く考えていきたいと思います。


 「ブラックホールの深部で生まれる星たち」とタイトルがついている上の画像は、ほうおう座の方向、約 58億光年にある「フェニックス銀河」です。その中心には超大質量ブラックホールがあり、多数の星が生まれていることが確認されています。私には赤い光と振動しているような青の線による形が、シサスクのサブタイトルそのままの「動揺する蝶」に思えて、とても驚きました。




 こんな画像も見つかりました。これはフェニックス銀河のブラックホールの印象を表したもので、巨大な電波泡を青で、泡の外側の分子ガスを赤で描いているということです。左右対象の羽のようで、まさに宇宙の蝶です!



Robert's Quartet


 これは「ロバートの四つ子銀河」と呼ばれ、ほうおう座の方向 1億6000万光年にある銀河群で、GC 87、88、89、92が含まれています。(NASAには画像がなく、Wikipadia より引用。ESO=ヨーロッパ南天天文台撮影。



 シサスクの ほうおう座の音楽には「赤道の星空」象徴的な主導動機(譜例1)と、この曲の主題となる「蝶」の動機(譜例2)が現れます。




譜例1



譜例2



  譜例1は ほうおう座冒頭を始め、4つの星座に出現します。この動機が何を意味するのか作曲家自身も明らかにしていませんが、もしかしたら超大質量ブラックホールのテーマかもしれません。渦を巻く銀河を表すようなパッセージは主導動機を繰り返す和音とともに力強く回転しているかのようです。蝶のテーマに含まれるスタッカートの音の粒は銀河の中心から大量に生まれ出る星たちを表しているのではないでしょうか。







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