52. ポンプ座 Antlia

ポンプ座  Antlia

強さを増して  Increase the Power


 これは 1万3000億光年にある「ポンプ座銀河団」です。おとめ座銀河団、ろ座銀河団についで、地球に 3番目に近い銀河団で、幅は 200万光年あります。シサスクはポンプ座の星座図(下図)に NGC 3347、3354、3358、3268 という銀河を表示していますが、それらはこの銀河団に含まれているようです。(NASA画像には残念ながら個々の銀河画像は見つかりませんでした。)



 ポンプ座銀河団には 200もの銀河があるようで、NASA にはこんな銀河画像が見つかりました。



 1億1000万光年にある渦巻銀河 IC 2560 で、中心には太陽の 280万倍の質量の巨大ブラックホールがあるとのことです。





 この銀河はろくぶんぎ座でも紹介した「ポンプ座ろくぶんぎ座銀河群」に属しています。ポンプ座の方向 500万光年にあり、この銀河群に所属する 4つの天体(他には NGC 3109、ろくぶんぎ座 A、ろくぶんぎ座 B)の中では最も暗い天体です。



NGC 3109(Wikipediaより)

 マゼラン銀河型の不規則銀河 NGC 3109 は、現在はうみへび座の領域にあるとされていますが、ポンプ座の銀河とするべきではないかという議論があるようです。この銀河は 10億年前にポンプ座矮小銀河と接近していたことがあり、現在でも潮汐力(重力の作用を受け合う)による相互作用があると考えられているためです。




 これは 4000万光年にある非棒状渦巻銀河 NGC 2997 で、7つの銀河が集まるNGC 2997 銀河群」に属する中心的存在であり、その銀河群の中で最も明るい銀河です。NGC 2997 銀河群」は地球に近いため、天の川銀河の構造を解き明かす手がかりを得られるのではないかと期待されています。




 これはNGC 2997 銀河群」に属する渦巻銀河 ESO 373-8 を真横から捉えたものです。2500万光年にあるこの銀河はゆっくり回転する巨大なガスの球として誕生し、NASAページの表現によると「ピザの生地が空中で回転して伸びるように急速回転した」ためにこのような平な円盤が形成されたようです。


 シサスクのポンプ座のイメージは「強さを増して」。

 ポンプ座には距離順に、ポンプ座ろくぶんぎ座銀河群(500万光年)、NGC2997 銀河群(4500万光年)、ポンプ座銀河団(1億3000万光年)が存在し、近くから遠くへ宇宙の断面図を見るような構造を想像することができます。シサスクが 2つの星座の曲、ポンプ座ろくぶんぎ座を並べたのも、この 2つがポンプ座ろくぶんぎ座銀河群」という切っても切れない宇宙の領域を共有しているからであることもわかりました。どちらも目立たない星ばかりで構成される地味な存在の星座ですが、星座というのは奥の奥に潜む天体を知ることで全く印象が変わることを教えてくれています。「強さを増して」というイメージは、気の遠くなるような年月をかけて大量の星を生み続け、重力で引き合いながら力を増している銀河の一生や、銀河が多数集まり、銀河群や銀河団といった巨大な集合体がつくられる過程などに感じ取ることができると思います。

 シサスクのポンプ座の音楽では、ひたすら繰り返される連打音と「ピザの生地のように?」伸縮するような左右に広がるアルペジョに圧倒されます。ところが強さが最大になる 144小節に来ると突如、「蝶が凍りつく」と書かれており、急激なディミヌエンド(強さの減少)によって思いもよらぬ変化が起きます。その後、「飛び立つ準備」という言葉でエネルギーを静かに溜め込み、「体を起こす」という言葉からは再び強さを増し、「飛び立つ」という言葉で蝶は風に乗って舞うように遠ざかり、天空へと姿を消してしまうのです。因みにポンプ座のポンプは科学実験で真空を作り出すための真空ポンプのことなので、蝶が姿を消すシーンは、吸引力の強いものに吸い込まれたのかもしれないと想像すると面白いでしょう。お気づきのように「狼」と「蝶」によって、ろくぶんぎ座ポンプ座の関係が暗示されていることは明白です。

 蝶はここで、狼のいる宇宙へ迷い込むのです。狼と蝶が出会うのはいつになるでしょうか。




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