20. オリオン座 Solidification

オリオン座  Orion

凝固  Solidification

M42: The Great Orion Nebula

 足元に 2匹の犬(おおいぬ座こいぬ座)を従えた狩人オリオンは、天の赤道にあるため、地球上のほとんどの地域から見ることができます。オリオン座で最も有名なのが、このオリオン大星雲(散光星雲)Orion Nebula  M42です。全天で最も壮大な天体の一つで、見かけの大きさが満月の 2倍以上あるので、条件によっては肉眼でも見ることができます。光るガスの集合体といわれる M42では、星が誕生しつつあります。



 これはオリオン座の全貌です。オリオン座のベルト(三つ星)の下にある Orion Nebula が M42です。ベテルギウス Betelgeuseはアラビア語で「巨人の腋の下」の意、リゲル Rigelは「巨人の左足」を意味します。




 オリオン座の美しい写真は限りなくあるかと思いますが、オーストリアのアルプス上空で撮影されたというこの画像はシサスクのイメージ「凝固」と重なりました。凝固という言葉は少し難しいですが、たとえば水の場合は「氷結」という言い方になるかと思います。
 北半球に暮らす人々にとって、オリオン座は冬の星座というイメージがあります。野尻抱影氏によれば、「凍りつく雲なき冬の夜ほど、星空は凄まじいばかりの美しさとなり、オリオン座付近から教えられた星の美と神秘は、生涯を通じ冬毎に味わずにはいられない」とのこと。この画像のオリオン座も冬ならではの澄み切った空気のせいか、輝きが一層、神秘さを増しているように見えます。

 シサスクのオリオン座の音楽は圧倒的な輝く力を有しながらも、凍てつく寒さには打ち勝てず、その有り余るエネルギーを放散しきれないまま、最後は凝固(氷結)し、息絶えるように終わります。「銀河巡礼」シリーズで内部奏法が初めて使われる曲でもあります。内部の弦を指で押さえながら弾く低音の連打音は、くぐもったに聞こえ、やがてその鼓動は途絶え、残る微かな光が生きていた証を伝えます。因みに冒頭の和音に含まれるシ(H)- ソ(G)- ミ(E)をオリオンのベルトの 3つの音と思い浮かべて弾いてみるのも良いかもしれません。

 ところで、オレンジ色に輝く星、ベテルギウスの光が近年、弱ってきています。数年後には爆発し、800万歳の命を終えて消えてしまうということです。ベテルギウスは 46億歳の太陽と比べると若いにもかかわらず、活動が激しかったため、内部の燃料を使い果たしてしまったのだとか。シサスクが自分が生きている間にオリオン座にこのような異変を見ると思っていたかどうかわかりませんが、不吉ささえ感じる音楽は、何か起きることを予言しているかのようにも聞こえます。

 最後に、オリオン座の素晴らしい画像をもう少し集めましたのでご覧ください。






 肥沃な星座、オリオン座の全貌です。この中に写っている主要な天体に近づいてみましょう。



 メシエ天体には 6つの散光星雲があり、そのうち3つがオリオン座にあります。冒頭に挙げた M42「オリオン大星雲」 Orion Nebulaと M43、そしてこの M78です。M78の辺りは、散光星雲(反射星雲、輝線星雲の総称)、暗黒星雲が入り乱れているのを楽しめます



 M43は M42「オリオン大星雲」 の隣にあってあまり目立たないようですが、拡大すると滝のように流れのある美しい色の天体です。輝く水素で構成される星形成領域とのことです。



 中央にチェスの駒馬ように突き出ているのは「馬頭星雲」 the Horsehead  です。馬頭の左側に「炎星雲 the Flame Nebula 、画像左上の明るい星は、オリオンベルトの3つの星の真ん中のアルニラムです



 これは燃え盛る炎のような帯「バーナードループ」Barnard's Loop という巨大な散光星雲で、200年前に発生した超新星爆発とのことです。




 これは右上の青色巨星リゲルの光を受けて光る反射星雲、「魔女の頭星雲」IC 2118 です。オリオン座には魔女も居たのですね。

 オリオン座はこうして近づいてみると、派手な星座に思えますが、夜空では、やはりクールです。もう一度、遠ざかって、アメリカ南西部のモニュメント・バレーより、火星と並ぶオリオンをどうぞ。




 


  



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