69. ケフェウス座 Cepheus

ケフェウス座  Cepheus

実在  Being


 ケフェウス座の方向 3000光年にある散光星雲 IC 1396は青みがかった中心の星をエネルギー源として、数百光年にわたって広がっています。左上の大きめのオレンジ色の星は赤色超巨星エラキス Erakis、別名ガーネット・スター(ざくろの石星)です。ウィリアム・ハーシェルがこの星の色から名付けました。この IC 1396の中央近くには「象の鼻」と呼ばれる曲がりくねった星雲があります。拡大した次の画像で見てみましょう。



 この宇宙象の鼻は IC 1396の分子雲 vdB 142で、複雑な色と構造を持ち、20光年以上もの長さがあります。塵の中では星形成が進んでいます。


Facing NGC 6946

 中間渦巻銀河 NGC 6946は 2250万光年の彼方にあります。花火銀河」とも呼ばれ、直径 4万光年に及ぶ銀河の中心部には古い星が集まっており、渦巻きの腕に沿って青い若い星団や赤い星形成領域が点在しています。過去 100年間に 8回の超新星爆発を観測、また 2021年までに 10個の超新星が発見されているという非常に活発な銀河です。


 「アイリス星雲」と名付けられた 1300光年の彼方に美しく花開く散光星雲 NGC 7023は星の光を反射する青い塵が特徴的で、花びらは 6光年にわたって広がっています。

 これはシサスク自筆によるケフェウス座の星座図です。ピンクの下線を記した天体を NASAの画像に見つけることができました。(NGC 7023の位置はシサスクが点のみ書き入れていますが、名前の漏れを補っておきました。)
  「ケフェイド変光星」と書き入れたケフェウス座の δ星は 800光年にあり、ケフェウス座 δ型変光星、またはセファイド変光星とも呼ばれる脈動変光星です。少し難しい話になるのですが、ケフェイド変光星は「宇宙の物差し」あるいは「宇宙の灯台」とも呼ばれ、明るさの周期を調べるとその星が存在する銀河系までの距離を精密に求めることができるのだそうです。変光星にはいろいろなタイプがありますが、数としては全天では 5万個以上、ケフェウス座の領域には少なくとも 14個確認されています。星座別に見ると14個という数ははくちょう座の 19個に次いで  2番目に多いです。

 シサスクはケフェウス座を構成する星の独特な名前も書き込んでいますが、黄色で色付けした星は羊飼い、羊の群れ、羊の番犬に見立てたアラビア語を語源とする名となっています。
 さらに興味深いことがあります。以前、こと座の「ベガ」が地球の歳差運動のために「約12000年後に北極星になる」と書きましたが、ケフェウス座にある  3つの星たちはこれよりも早く次々北極星になるといいます。過去の北極星がこれまでにどのように入れ替わってきたのか、またこれからどうなるのか調べてみました。

 7000年前  ヘルクレス座 τ
 5000年前  りゅう座   α トゥバン
 3000年前  こぐま座   β コカブ
 現在    こぐま座   α ポラリス 
 2000年後  ケフェウス座 γ エライ(アラビア語 ALRAI)
 4000年後  ケフェウス座 β アルフィルク
 5800年後  ケフェウス座 α アルデラミン
 9000年後  はくちょう座 α デネブ
   12000年後    こと座    α ベガ
  (途中省略)
   24000年後  こぐま座   α ポラリス


 シサスクのケフェウス座の星座図の上の方に NGC 188が記してあります。これは 5400光年の彼方、星図的には北極星に最も近い散開星団です。位置関係を確かめておきましょう。




 C1と書かれたところが NGC 188の位置です。こぐま座 Ursa Minorのポラリス(北極星)といかに近いか、またケフェウス座自体も北極星にとても近いことがわかります。


 シサスクのケフェウス座のイメージは「実在」。

 そこに確かにあるもの、過去にあったもの、将来あるもの。北極星交代の話もそうですが、アラビア語を語源とする星名も太古からの「実在」を物語っています。

 シサスクのケフェウス座の音楽は Aと Bの二部構成となっていて、それぞれ一定の保続音の上に作られ、 規則正しい拍節と収縮を表すようなリズムが絶え間なく続いていきます。また Aでは「H H H H A Fis Fis」という旋律が 12回、Bでは「A A A A C A A」という旋律が 6回現れます。保続音の打鍵回数は次のようになっていました。

 A 前奏を除く左手の「H」の保続音(オクターブ含む)60回
     右手のH H H H A Fis Fis」12回  
 
 B 左手の「A」の保続音 30回
     右手の「A A A A C A A」6回

 この結果は驚きです。宇宙というのはすっきりと数字で表せる秩序を保っていることに改めて気付かされたような気持ちになりました。打ち鳴らされる保続音は同じところに留まる北極星を表しているのではないでしょうか。数千年ごとに変わる北極星 Aと B、そしてケフェウス座に存在し続ける多くの変光星たち。Aでは ffの「シ H」のオクターブとパッセージが 3度現れるのですが、それらは画像で見てきた「象の鼻」や「花火銀河」、「アイリス星雲」の華やかな姿かもしれません。

 【譜例1】ケフェウス座の冒頭

 第 3小節からの左親指のアクセントA-G-A-H-C-H-A-G」は、第 8小節からは「G」を除いて逆読みでA-H-C-H-A-G-A」とアクセントがつきます。進んだり引き返したり、入れ違ったり部分的に輝かせたり、アクセントには激しく活動し続ける星々のエネルギーを感じます。

 Bでは左手はずっと 2/4拍子なのに、右手は 4拍子、5拍子、3拍子・・と変わっていきます。譜例2はその終わりの部分です。永遠に時が刻まれる中、北極星は不規則に交代していく(同じところに戻るとは限らないそうです)といった縮図にも思えます。


 【譜例2】


 ケフェウス座の曲から思い出されるシサスクの別の曲があります。《ベツレヘムの星カペラ》Op. 56の第5曲「暮れない星」です。(譜例3)

 【譜例3】「暮れない星」冒頭



 カペラという星はぎょしゃ座にあり、北極星に一番近い一等星です。エストニアでは一日中沈まず、クリスマスにその輝きを増すと親しまれている周極星で、かつて北極星だったことがあるかもしれないともいわれています。この曲も左手は同じ音型を繰り返すことで沈まないカペラを表しているでしょうか。右手には春夏秋冬を歌うエストニアの民謡が現れ、季節のメインの星座がスポットライトを浴びていくようにも思えます。こうした構成からも、ケフェウス座の保続音が未来の北極星を連想させるのです。




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