74. しし座 Leo

獅子座  Leo

探し求める者  The Seeker


 一つの視野に収まった 3つの銀河は 3000万光年にあり、「しし座トリオ」または「しし座の三つ子銀河」と呼ばれています。NGC 3628(右上)、M66(左上)、M65(左下)が異なる角度で傾いて見えていますが、互いに重力の影響を受け合い、渦巻に歪みが生じているとのことです。NGC 3628を拡大して見てみましょう。


Portrait of NGC 3628

 真横から見た(エッジオン)銀河ですが、厚みがあるように見えるからか、米国では「ハンバーガー銀河」とも呼ばれています。



 より鮮明な M65(上)とM66のペア画像です。これらは私たちの天の川銀河とほぼ同じ大きさとのことです。赤と青のコントラストが美しい M66の拡大画像も見つけました。




 この画像からはわかりにくいですが、M66の銀河核は中央から少しずれているそうです。
 

 これは 5000万光年にある渦巻銀河 NGC 3810です。中心部の明るい領域では多くの新しい星が生まれていると考えられています。しっかりと渦巻く腕には青く巨大な星雲がいくつも映し出されています。



 シサスクは「しし座トリオ」とは明示していませんが、その 3つの銀河を記しています。赤で囲んだトリオの他にもう一つ、銀河トリオがあると言われており、それが青で囲んだメシエ天体、M95、M96、M105です。順に見ていきましょう。



 M95は 3800万光年にある棒渦巻銀河で、直径は 75000光年あります。
 

Spiral Galaxy M96 from Hubble

 M96は渦巻銀河で 3500万光年にあります。直径は天の川銀河(10万光年)とほぼ同じです。


 M105は 3200万光年にある楕円銀河です。渦巻の特徴もなく、ぼんやりとしていますが、中心には太陽の 2億倍と推定される超大質量ブラックホールがあると考えられています。

 しし座には他にも見落とされがちな銀河があるようです。シサスクの星座図で位置を確認してみてください。



 ゴージャスな渦巻銀河 NGC 3521はどの距離にあるのか確定しておらず、2600万光年〜3500万光年とされています。


 シサスクの星座図には渦巻銀河 NGC 3227しか記されていませんが、この銀河は小さな楕円銀河 NGC 3226と相互作用の関係にあり、重力で引き合い、いずれ合体するかもしれません。いずれも 7700万光年にあり、NGC 3227には超大質量のブラックホールが存在します。この 2つの銀河には Arp 94というカタログ番号もあります。1966年にアメリカの天文学者ホルトン・アープ  H. C. Arp(1927-2013)が出版したカタログ「アープ・アトラス」 Atlas of Peculiar GalaxiesにはArp番号が付けられた 338個の特異銀河が集められています。

 NASAなどの画像を使って 特異銀河をまとめた動画があります。ここには 40個の興味深い Arp銀河を見ることができます。(音が出ますのでご注意ください)動画の終わりの方にはシサスクの星座図には記されていないしし座  β星(デネボラ)近くにある「コープランドの七つ子」Copeland Septet(Arp 320)という銀河群が出てきます。冒頭に挙げた「しし座トリオ」はその 2つ前に Arp 317として出てきます。

40 Most Peculiar Galaxies: Highlights from the Arp Atlas





 しし座の獅子の鼻先にある棒渦巻銀河 NGC 2903は 3000万光年にあります。渦巻の腕の広がりがとても長く、優雅な形をしています。



 シサスクの星座図で黄色に色付けした α星と β星には次のような固有名があります。

 α星 レグルス Regulus 「小さな王」(ラテン語/起源はギリシャ語)
 β星 デネボラ Denebola 「獅子の尾」(アラビア語)

 上の画像は青い光を放つ一等星レグルスで、ライオン(王)の心臓とも言われています。レグルスの下にはぼんやりとした微細な星々の集まりが映し出されていますが、これは「しし座銀河 1」Leo Ⅰ と呼ばれる矮小楕円体銀河で、天の川銀河の伴銀河でもあります。天の川銀河の伴銀河といえば最も有名なのは「マゼラン銀河」ですが、数ある伴銀河の中でもしし座銀河 1」は最も遠くにある伴銀河 82万光年) ではないかと考えられています。シサスクも星座図に LEO Ⅰ と記しています。レグルスがこれほど明るいのは、わずか 75光年にあるためです。

 シサスクのしし座のイメージは「探し求める者」。
 
 楽譜は 4段譜になっていて、上の譜表には Leidmine(finding 発見※)、下の譜表には Otisja(seeker 探求者)と記されています。曲は下の譜表から始まるのですが、4段譜で書くことで「天体望遠鏡で探索→何かを発見」という観測状況が一目でわかるようになっています。(譜例1)

 【譜例1】

    ※エストニア語 Leidmine (動詞 leidma の名詞形)の英訳は  find out、 discover が適切)


 冒頭のメロディには前曲「おとめ座」最後の 3小節をそのまま使っているため、終わったはずの「おとめ座」が再び始まったように思えます。このことは何を意味するのでしょう。おとめ座では見つからなかったものを隣のしし座に範囲を広げて探索しようとしたのではないでしょうか。
 そう、おとめ座で見当たらなかったものに次の 3つの音がありました。(譜例2)

【譜例2】



 最初の 2つのミ(E)はしし座の冒頭に発見しました!(譜例3)

【譜例3】


 しかし残るラ(A)は見つかりません。 練習番号[7]に Leidmine(発見)の文字が敢えて(?)書き込まれていたので、注意深く見てみましたが、高さを問わず、ラ(A)の音は一つもありませんでした。一つもないというのがこれまた気になるところですが・・。
 そしてしし座の曲は、「探し求める者」というイメージのまま、おとめ座の最後と同じ和音で終わってしまいます。



しし座 & こじし座  
Urania's Mirror, constellation card in London, 1824(Wikipedia)


 同じ方向を向いているこの 2頭のライオンがちょっと振り返ったら、大事な星が見つかるかも。
 





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