77. ヘルクレス座 Hercules

ヘルクレス座  Hercules

夢見る者  A Dreamer


 最も美しい球状星団であると多くの天文学者が口をそろえる M13 は25000光年にあり、50万個の星が集まっています。明るさにおいては1000万個の星を有するケンタウルス座の球状星団 NGC 5139「オメガ星団」勝りますが、美しさにおいては NASA の最新画像を見る限り、 M13 の方が優るかもしれません。赤色巨星と青色巨星が入り混じって、繊細なラベンダー色に見えるところがなんとも魅力的です。球状星団は古い星が多く、M13 は推定 116億歳と考えられています。



 球状星団 M92 はゴージャスで見応えがあります。27000光年にあり、直径は M13 と同じくらい、星の数はおよそ30万個、推定年齢は110億歳です。


IC 4593

 IC 4593 はヘルクレス座の南、へび座ごの境目にある惑星状星雲で、7800光年にあります。死にゆく恒星がガスを放出し、質量を失い始めています。




 ベルギーとドイツの国境にあるアイフェル自然公園 Eifel Nature Parkの写真をお借りし、筆を入れました。ヘルクレス座 Hercules は「夏の大三角」(はくちょう座 Cygnus のデネブ、わし座のアルタイル、こと座のベガ)の下にありますこの写真は西から東(左から右)に、夏から冬の星々へと移り変わっていく様子を写し出しています。
 赤点線は、ヘルクレス座おうし座 Taurus 北極星 Polarisを中心に対極的な位置にあること示しています。北極星を天頂にした球体の場合、ヘルクレス座おうし座は表と裏という関係になります。赤点線が横切っているきりん座 Camelopardalis は、きりん座ヘルクレス座おうし座 と同経度に並んでいることを示しています。一方、黄点線で繋いだはくちょう座ヘルクレス座かんむり座 Corona Borealis は同緯度に並んでいることを示しています。

 いっかくじゅう座を思い出してください。いっかくじゅう座は「冬の大三角」と重なるように位置していました。つまり「夏の大三角」と隣り合わせのヘルクレス座とは、ややズレはあるものの、やはり表と裏の位置関係になっているのです。

 シサスクはそうした関係を音楽で表しています。ヘラクレス座のテーマ冒頭は、なんといっかくじゅう座のそれとほぼ同じなのです。しかも、ユニークな工夫がされています。(譜例1)

 【譜例1】  「ヘルクレス座」冒頭

 丸で囲んだ 4つの音を "ヘ音記号読み" してみてください。

ラ(A) -   ミ(E)  -   ド(C) -   シ(H
ド(C) -   ソ(G)  -   ミ(E) -   レ(D)

臨時記号を付け、拍子を変えれば、
いっかくじゅう座のフーガの冒頭そのものです。




 ところで、きりん座を経て、ヘルクレス座おうし座を繋いだのには、もう一つ、理由があります。おうし座の領域にはプレアデス星団があるからです。きりん座の曲の前にシサスクは、長い文章を載せていました。その文の最後に

「この曲の主題とメッセージは、太陽系外惑星クイッティ・フイッティとの精神的な音声通信から2015年12月に受け取りました。」

とありましたが、きりん座にはじょうぎ座に現れたクイッティ・フイッティ」のテーマ(63. じょうぎ座を参照)の再現はありませんでしたクイッティ・フイッティは「プレアデス星団の背後に息づく生命」ですから、ヘルクレス座プレアデス星団と関係があるのかどうかを知りたかったわけです。

 ここでもう一度、きりん座のテーマを見てみましょう。そして ヘルクレス座の冒頭(譜例1)とよく見比べてください。(譜例2)

【譜例2】


赤丸の音符を並び替え、臨時記号を取ってみると、どうなるでしょうか?

ラ(A) -   ミ(E)  -   ド(C) -   シ(H

 何ということでしょう ヘルクレス座のテーマらしきものがきりん座において、見え隠れしていたのです。シサスクがこのような関係性を仄めかしてくれなかったら、ヘルクレス座からおうし座へと辿り着く道筋は発見できなかったかもしれません。
 しかしながら、プレアデス星団おうし座の端の方にあるため、ヘルクレス座プレアデス星団表裏の関係と言い切るには無理があります。そのことをもシサスクは音楽で表しています。クイッティ・フイッティのテーマは不完全な形で現れるのです。じょうぎ座で現れるテーマと比べてみましょう。(譜例3)

【譜例3】

じょうぎ座で現れるクイッティ・フイッティ」のテーマ
ヘルクレス座ではテーマの途中(青の囲み)から
音を拾い、リズムも変えています。
            ↓


テーマの前半部分は次のように曖昧にしています。


 シサスクのヘルクレス座のイメージは「夢見る者」。

 夢のイメージといえば、みずがめ座(夢)、らしんばん座(夢見る者の幻影)も思い起こされます。英雄ヘラクレスが見た夢には、ユニコーンの幻影が現れたのかもしれません。
 冒頭のテーマは、クイッティ・フイッティのテーマ出現の後からはニ短調に、しかもいっかくじゅう座のテーマに戻ったかのようです。ユニコーンのテーマと言ってもよいかもしれません。(譜例4 の 9番〜)

【譜例4】



 終結部ではユニコーンのテーマが保続音レ(D)に溶け込むように変化、その音を中心に22小節間、ヘルクレス座現れたクイッティ・フイッティのテーマの断片が、まるで万華鏡のように美しい転調を繰り返します。そうして辿り着いたのは、ニ長調の儚くも幸福な響きに満ちた世界でした。(譜例5)


【譜例5】 ヘルクレス座の終結部は 116小節から始まります。




 これは、5億光年の彼方にあるヘルクレス座銀河団」Abell 2151です。アイフェル自然公園の写真では、この領域はすでに地平線下に落ちてしまっています

 シサスクはこんなにも美しい Abell 2151 を星座図に記していません。もしかして書こうとしていたら途中で寝落ちしてしまって、夢の中で書いたつもりになっていたとか ?

 クイッティ・フイッティに今度はどこで出会えるでしょうか。








コメント