馭者座 Auriga
A. 踊る山羊 A Dancing Goat
B. 明かされる存在 Revealing Being
B. 明かされる存在 Revealing Being
この画像でまず驚くのは、星があまりにも隙間なく密集していることです。ぎょしゃ座のこの領域が天の川と重なっているためですが、それゆえここには多くの星団、特徴的な星雲も潜んでいます。尾を引く彗星は 2018年 9月9日の夜に通り過ぎたジャコビニ・ツィナー彗星 Comet 21P/ Giacobini- Zinnerです。 写真中央付近とその右には星がさらに密に白く凝縮している部分がありますが、どちらも約4000光年にある散開星団で、 M38と M36です。 上の方に平行四辺形を形作って青く輝く 4つの星がありますが、これは「メロッテ 31」Melotte 31と呼ばれる散開星団です。それを挟んで対になっている大きな目のような 2つの赤い塊はどちらも散光星雲で、左側が IC 405、右側が IC 410です。それらの拡大された画像も見てみましょう。
左上の IC 405は 1500光年にあり、炎上する星の星雲という意味の "Flaming Star Nebula" 、またはその形状から日本では「勾玉(Maga-tama)星雲」の愛称で呼ばれています。右上の IC 410は 12000光年にあり、「おたまじゃくし星雲」Tadpoles Nebulaと呼ばれていますが、その理由はこのあと書きます。
散光星雲 IC 405「勾玉(Maga-tama)星雲」の拡大画像です。炎や煙のように見えるのは星間水素とのこと。燃えるひだの中で周囲に青白い光を放っている恒星は「ぎょしゃ座 AE星」AE Aurigaeという名の逃走星 Runaway Starです。逃走星とは連星が衝突し、はじき出された星のことで、ぎょしゃ座 AE星はなんとはと座から飛んできた星とのことです。この星は非常に高温で強い光を放ち、IC 405を光らせる光源となっています。
これは散光星雲 IC 410の中心部を拡大した画像です。ガスと塵でできた宇宙の池のような光景に、おたまじゃくし Tadpolesがいます! IC 410が「おたまじゃくし星雲」と呼ばれる所以がこれでわかりましたね。おたまじゃくしの長さは約10光年とのこと、そこでは星形成が進んでいると考えられています。 シサスクは星座図に IC 410を記さず、IC 410の中心部にある散開星団 NGC 1893の方を記しています。この画像では前景の塵のせいで、NGC 1893のすべては見えていないようですが、NGC 1893の非常に高温で明るい星々も IC 410のガスを輝かせているとのことです。
シサスクによるぎょしゃ座の星座図は、繋いでいる点線が一部不鮮明であったため修正を加えています。また線の色分けは、ぎょしゃ座の音楽構成と関係しています。
シサスクは「さんかく座」の音楽を「第一のビッグボタン」1st. Big Buttonとしましたが、「ぎょしゃ座」の音楽はそれを引き継いでいます。星座図では黄色の 3つの星が 「第二のビッグボタン」2nd. Big Button、青色の 3つの星が「第三のビッグボタン」3rd. Big Buttonです。緑の点線はぎょしゃ座の入口、つまり音楽では前奏部分(10小節)です。ピンクの線は 2つの「ビックボタン」を繋ぐ移行部(4小節)に相当すると考えました。シサスクは線の長さまで考えて小節数を設定したのでしょうか。移行部のピンクの線は Capella(雌ヤギ)と Almaaz(雄ヤギ)を結ぶのみならず、その先には 2匹の子ヤギ Hoedusが生まれていることを示しています。
シサスクは曲全体を大きく Aと Bの 2つに分け、Aには「踊る山羊」、Bには「明かされる存在」というタイトルをつけました。これらのタイトルがシサスクのぎょしゃ座のイメージにもなっています。以下に音楽構成をまとめましたので、星座図と見比べてみてください。
【A】踊る山羊
🔹10小節の前奏
🔹 第二 の Big Button1st. Button ①&④ θ Mahasim 馭者の手首/連星
2nd. Button ②&⑤ β Menkalinan 馭者の肩/三重連星
3rd. Button ③&⑥+⑦α Capella 雌の小さなヤギ/四重連星ε Almaaz 雄の小さなヤギ/食変光星
🔹4小節の移行部 ⑧_________________
【B】明かされる存在
🔹第三の Big Button1st. Buttonι Hassaleh (意味不明)①&②
2nd. Button# Elnath 角で突く(おうし座 β星)③
3rd. Button= 1st. Little Button ④
ζ Hoedus I 子ヤギ 1 η Hoedus Ⅱ 子ヤギ 2
①〜⑧の番号は楽譜に記されている練習番号を表しています。 前半 Aの「踊る山羊」というイメージは、ぎょしゃ座のカペラの意味が「雌の小さなヤギ」であることが関係しているだけでなく、「第二の Big Button」の星がすべて連星であることから来ているのではないでしょうか。連星は 2つ以上の星が互いに引力を及ぼし合って公転運動をしています。食変光星 eclipsing binaryも連星で、公転中に 2つの星が重なり合う「食」の時に明るさが変化します。そうした連星の動きは、まるでペアダンスのようなのです。次の動画は食変光星の公転運動のイメージ動画です。
「第二の Big Button」の 3つのボタンのそれぞれのテーマは、入り混じるように 2度ずつ変化を伴って現れます。3つ目の星 3rd. Buttonでは、四重連星である Capellaと食変光星である Almaazが複雑で速い回転をしている様子が音楽に表れています。
後半 Bの「明かされる存在」とは何を指しているでしょうか。一つは 2nd. Buttonの Elnath(エルナト)でしょう。Elnathはぎょしゃ座の星ではなく、 おうし座の β星なのです。 楽譜にはそのことは書かれていませんが、勇壮な音楽がそれを裏付けています。そしてもう一つの存在、それは最後に現れます。聞き覚えのある音楽です。(譜例)
【譜例】
お気づきでしょうか。このテーマは前曲の『さんかく座』冒頭 1st. Buttonにそっくりです。シサスクは 1st. Little Buttonと記して、音楽とともにさんかく座の 1st. Buttonを思い出すよう促したのでしょう。「ぎょしゃ座には子ヤギの 2つの星と Almaaz (雄の小さなヤギ)で形作られる三角形があるのをお忘れなく!」と言っているような、なんともシサスクらしいユーモラスな終わり方です。シサスクの星座図でさくらんぼのようにも見える小さな三角形を確認してくださいね。
左上の IC 405は 1500光年にあり、炎上する星の星雲という意味の "Flaming Star Nebula" 、またはその形状から日本では「勾玉(Maga-tama)星雲」の愛称で呼ばれています。右上の IC 410は 12000光年にあり、「おたまじゃくし星雲」Tadpoles Nebulaと呼ばれていますが、その理由はこのあと書きます。
散光星雲 IC 405「勾玉(Maga-tama)星雲」の拡大画像です。炎や煙のように見えるのは星間水素とのこと。燃えるひだの中で周囲に青白い光を放っている恒星は「ぎょしゃ座 AE星」AE Aurigaeという名の逃走星 Runaway Starです。逃走星とは連星が衝突し、はじき出された星のことで、ぎょしゃ座 AE星はなんとはと座から飛んできた星とのことです。この星は非常に高温で強い光を放ち、IC 405を光らせる光源となっています。
これは散光星雲 IC 410の中心部を拡大した画像です。ガスと塵でできた宇宙の池のような光景に、おたまじゃくし Tadpolesがいます! IC 410が「おたまじゃくし星雲」と呼ばれる所以がこれでわかりましたね。おたまじゃくしの長さは約10光年とのこと、そこでは星形成が進んでいると考えられています。
シサスクは星座図に IC 410を記さず、IC 410の中心部にある散開星団 NGC 1893の方を記しています。この画像では前景の塵のせいで、NGC 1893のすべては見えていないようですが、NGC 1893の非常に高温で明るい星々も IC 410のガスを輝かせているとのことです。
シサスクによるぎょしゃ座の星座図は、繋いでいる点線が一部不鮮明であったため修正を加えています。また線の色分けは、ぎょしゃ座の音楽構成と関係しています。
シサスクは「さんかく座」の音楽を「第一のビッグボタン」1st. Big Buttonとしましたが、「ぎょしゃ座」の音楽はそれを引き継いでいます。星座図では黄色の 3つの星が 「第二のビッグボタン」2nd. Big Button、青色の 3つの星が「第三のビッグボタン」3rd. Big Buttonです。緑の点線はぎょしゃ座の入口、つまり音楽では前奏部分(10小節)です。ピンクの線は 2つの「ビックボタン」を繋ぐ移行部(4小節)に相当すると考えました。シサスクは線の長さまで考えて小節数を設定したのでしょうか。移行部のピンクの線は Capella(雌ヤギ)と Almaaz(雄ヤギ)を結ぶのみならず、その先には 2匹の子ヤギ Hoedusが生まれていることを示しています。
シサスクは曲全体を大きく Aと Bの 2つに分け、Aには「踊る山羊」、Bには「明かされる存在」というタイトルをつけました。これらのタイトルがシサスクのぎょしゃ座のイメージにもなっています。以下に音楽構成をまとめましたので、星座図と見比べてみてください。
【A】踊る山羊
🔹10小節の前奏
🔹 第二 の Big Button
1st. Button ①&④
θ Mahasim 馭者の手首/連星
2nd. Button ②&⑤
β Menkalinan 馭者の肩/三重連星
3rd. Button ③&⑥+⑦
α Capella 雌の小さなヤギ/四重連星
ε Almaaz 雄の小さなヤギ/食変光星
🔹4小節の移行部 ⑧
_________________
【B】明かされる存在
🔹第三の Big Button
1st. Button
ι Hassaleh (意味不明)①&②
2nd. Button
# Elnath 角で突く(おうし座 β星)③
3rd. Button= 1st. Little Button ④
ζ Hoedus I 子ヤギ 1
η Hoedus Ⅱ 子ヤギ 2
①〜⑧の番号は楽譜に記されている練習番号を表しています。
前半 Aの「踊る山羊」というイメージは、ぎょしゃ座のカペラの意味が「雌の小さなヤギ」であることが関係しているだけでなく、「第二の Big Button」の星がすべて連星であることから来ているのではないでしょうか。連星は 2つ以上の星が互いに引力を及ぼし合って公転運動をしています。食変光星 eclipsing binaryも連星で、公転中に 2つの星が重なり合う「食」の時に明るさが変化します。そうした連星の動きは、まるでペアダンスのようなのです。次の動画は食変光星の公転運動のイメージ動画です。
「第二の Big Button」の 3つのボタンのそれぞれのテーマは、入り混じるように 2度ずつ変化を伴って現れます。3つ目の星 3rd. Buttonでは、四重連星である Capellaと食変光星である Almaazが複雑で速い回転をしている様子が音楽に表れています。
後半 Bの「明かされる存在」とは何を指しているでしょうか。一つは 2nd. Buttonの Elnath(エルナト)でしょう。Elnathはぎょしゃ座の星ではなく、 おうし座の β星なのです。 楽譜にはそのことは書かれていませんが、勇壮な音楽がそれを裏付けています。そしてもう一つの存在、それは最後に現れます。聞き覚えのある音楽です。(譜例)
【譜例】
お気づきでしょうか。このテーマは前曲の『さんかく座』冒頭 1st. Buttonにそっくりです。シサスクは 1st. Little Buttonと記して、音楽とともにさんかく座の 1st. Buttonを思い出すよう促したのでしょう。「ぎょしゃ座には子ヤギの 2つの星と Almaaz (雄の小さなヤギ)で形作られる三角形があるのをお忘れなく!」と言っているような、なんともシサスクらしいユーモラスな終わり方です。シサスクの星座図でさくらんぼのようにも見える小さな三角形を確認してくださいね。
ヒマラヤ山脈で撮影されたぎょしゃ座 Aurigaとおうし座 Taurusです。ぎょしゃ座はシサスクの星座図に近い繋ぎ方になっています。ぎょしゃ座を形作る星の一つがおうし座の星であることもよくわかります。
ヒマラヤ山脈で撮影されたぎょしゃ座 Aurigaとおうし座 Taurusです。ぎょしゃ座はシサスクの星座図に近い繋ぎ方になっています。ぎょしゃ座を形作る星の一つがおうし座の星であることもよくわかります。
スウェーデンのタンダレン Tanndalenにて撮影された星空で、「冬の大六角」(冬のダイヤモンド)Winter Hexagonが夜空いっぱいに写っています。ぎょしゃ座がどこにあるかわかりますか? 一番明るく輝くカペラを探してください。エストニアではカペラは一年中沈まず、クリスマスに最も明るく輝く星といわれています。
ポーランド北東部、シエミオニ Siemiony 近郊で撮影された夜空です。ここには「冬の大六角」「冬の大三角」、ぎょしゃ座のほか、さんかく座も写っています。探しやすいように元の画像の上下を逆にして編集しました。さんかく座を見つけるのは難易度高いです。
丸で囲んであるのは左から、プレアデス星団、さんかく座、そしてアンドロメダ銀河 M31 です。
最後に、ぎょしゃ座の馭者(ぎょしゃ)とはどういうイメージなのかを見ておきましょう。
from Urania's Mirror, a set of celestial cards(Wikipedia)
馭者とは馬車の馬を操る人のことですが、この馭者の肩には、2匹の子ヤギを連れたヤギ(カペラ)が乗っています。なんとも 意外なイメージですね。
スウェーデンのタンダレン Tanndalenにて撮影された星空で、「冬の大六角」(冬のダイヤモンド)Winter Hexagonが夜空いっぱいに写っています。ぎょしゃ座がどこにあるかわかりますか? 一番明るく輝くカペラを探してください。エストニアではカペラは一年中沈まず、クリスマスに最も明るく輝く星といわれています。
ポーランド北東部、シエミオニ Siemiony 近郊で撮影された夜空です。ここには「冬の大六角」「冬の大三角」、ぎょしゃ座のほか、さんかく座も写っています。探しやすいように元の画像の上下を逆にして編集しました。さんかく座を見つけるのは難易度高いです。
丸で囲んであるのは左から、プレアデス星団、さんかく座、そしてアンドロメダ銀河 M31 です。
最後に、ぎょしゃ座の馭者(ぎょしゃ)とはどういうイメージなのかを見ておきましょう。
from Urania's Mirror, a set of celestial cards(Wikipedia)
馭者とは馬車の馬を操る人のことですが、この馭者の肩には、2匹の子ヤギを連れたヤギ(カペラ)が乗っています。なんとも 意外なイメージですね。
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