22. ペルセウス座 Perseus

ペルセウス座  Perseus

黙想  Meditation

Perseids over the Pyrénées 


Perseid Night at Yosemite

 ペルセウス座は《銀河巡礼〜北半球の星空》最後の曲です。

 この曲の演奏を終える時、シサスクは「ペルセウス座流星群」を思い浮かべ
ることでしょう。「ペルセウス座流星群」のNASA画像には優れたものがたくさんありますが、中でも感動したのが上の画像、ピレネー国立公園とヨセミテ渓谷の2枚です。

 シサスク14歳のある夏の日(1975年8月)のことです。一台のグランドピアノが翌日の修理に出すため、一晩だけ外に置いてありました。彼がそのピアノを弾き始めると、夜空はやがてとてつもなく大きな天の川に覆われ、とりわけシオペヤ座が彼を魅了しました。星々に抱かれながらイメージはみるみる音に変わり、初めての星座の曲「カシオペヤ座」が生まれました。同時に、カシオペヤ座の浮かぶ天の川から降り注ぐペルセウス流星群を仰ぎ見るうちに、彼の心には全天88星座をピアノ音楽に書き表したいという特別な願いが心に浮かんだといいます。

 夏の風物詩でもある「ペルセウス座流星群」は、極大(ピーク)を迎える 8月中旬に、1時間あたり 30〜100 の流星が出現、その流れる速度は速く、途中で急激に増光したり、飛球も多いそうです。(下の画像は、ドイツのWeikersheim 上空)


 ペルセウスは、美姫アンドロメダ(父はケフェウス、母はカシオペヤ)を救った勇士の名です。天の川の本流はカシオペヤ座からペルセウス座を通り、ペルセウスの足の先には、おうし座の「プレアデス星団」が輝いています。




 ペルセウスは右手で剣を振りかざしています。その剣の輝きを表すかのように、上画像のような二重星団(NGC 869、NGC 884)があります。野尻抱影氏はこれを「ペルセウスの剣の柄」と呼び、月のない夜には肉眼でもぼーっと見え、双眼鏡で見ると、宝玉をちりばめた剣、あるいは二つかみの砂金をこぼしたような美しさであると称えています。
 ペルセウスは左手に、女怪メドゥサの首を提げています。メドゥサの額(ひたい)には β星「アルゴル algol)」という変光星が明滅しています。アルゴルとは悪魔の意で、昔の人はその不気味さを恐れていたといいます。




   この画像の赤い星雲はペルセウス座領域の南の境界あたりにある「カリフォルニア星雲」(NGC 1499)と呼ばれる散光星雲。アメリカのカリフォルニア州と似た形であることからその名が付きました。その右もペルセウス座の散光星雲で IC 348、NGC 1333、一番右はおうし座の領域にある「プレアデス星団」です。




 ペルセウス座の方向には、眩いばかりの「ペルセウス座銀河団」もあり、地球からは 2億2200万光年離れているといわれています。この銀河団について、驚くべき情報をNASAから得ました。




 これは「ペルセウス座銀河団」の中心部を示す画像で、真ん中の最も明るい光源はブラックホールです。このブラックホールで波打つ高温ガスの圧力によって音波が生成され、「ペルセウス座銀河団」を介して音が放出されているというのです。天文学者の推定によるとその音は、中央ハ(C)より 57オクターブと長 2度低い変ロ(B)で、宇宙で一番低い音であると!

 この情報を得て、私はエストニアのヤネダでシサスクと初めて会った時、彼が「宇宙には人の耳には聞こえない何十オクターブも低い音が存在する」と話してくれたことを思い出しました。その時は正直、どういうことなのかよくわからなかっただけに、謎が解けたような思いです。


 シサスクのペルセウス座のイメージは「黙想」。

  Meditation は瞑想とも訳せませすが、敢えて「黙想」としました。聞こえるかもしれない宇宙の声(音)に静かにじっくりと耳を傾ける・・。想いはそこから深まることを教えてくれています。

 シサスクのペルセウス座の音楽は、イ(A)音が中心的な音となっていて、曲の最後はピアノの一番低いイ(A)音が使われています。残念ながら宇宙の一番低い音、変ロ(B)をこの曲の最低音にしたくとも88鍵のピアノには存在しません。おや?!  よく見ると、高さに拘らず、曲中に変ロ(B)音が一つもありません! このことがもしも、人の耳に聞こえない変ロ(B)音を示唆しているとしたら面白いですね。

 曲は ♩=40 の速度で、変光星アルゴルの不穏な光のようなゆらぎに始まって、色合いの変化とともに視野が拡がり、速度が増し、銀河団のブラックホールへ吸い込まれるような猛烈なエネルギーが生まれます。速度は prestissimo possibele(できるだけ急速に)の指示でピークに、強さもピークの ffff に達すると、突如、回転速度が落ちたかのようにテンポが ♩=32 に(私は 4分の4拍子を 1小節、7秒でカウントしています)、そして最低音イ(A)音を含む重厚な和音が轟きます。その響きの中から、冒頭のメロディが再現、終わりなき終わり・・次なる世界はどこへ?と彷徨い、《銀河巡礼〜北半球の星空が閉じられます。



 次回は「プレアデス星団」へ立ち寄り、「北半球の星空」についての連載を終えたいと思います。


 

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