27. ケンタウルス座 Centaurus

ケンタウルス座  Centaurus

啓発  Enlightenment

Centaurus A

 天の川の南にある大きなケンタウルス座には、2つの 1等星  α ケンタウリと  β ケンタウリがあります。特に α ケンタウリは肉眼で見える最も近い 1等星です。しかし日本では九州の南端まで行かないと見えないそうです。ケンタウルスは下半身が馬という神話上の獣です。




 
 シサスクの詳細な星座図には、ケンタウルス座の領域に 10の銀河の位置が書き込まれています。NASA画像を一つ一つ調べたところ、3つの画像が見つかりました。大きな 2つの黒い玉で描かれている星が α ケンタウリと  β ケンタウリ です。

 冒頭の画像は、 NGC 5128「ケンタウルス座 A」。地球に最も近い銀河(1100万光年/楕円銀河)で、他の銀河と衝突したためにこのような形になり、強烈な電波を発しているそうです。



   「クレタ島のアルファからオメガへ」と題されたこの美しい画像の夜空の中央に輝くのは、全天で最も大きく最も明るい球状星団、NGC 5139「オメガ星団」です。「オメガ星団」の上の方にぼんやりとした光を放っているのが「ケンタウルス座 A」 です。下の画像は「オメガ星団」の拡大版です。


Star Cluster Omega Centauri

 「オメガ星団」には約1000万個の星がひしめいていると言われています。その中の多くは太陽より古い星とのこと。その理由はわかっていないようです。

 シサスクの作品には《銀河巡礼〜南半球の星空》より後の作品になりますが、チェロ独奏のための「アルファとオメガ〜宇宙の誕生 Alpha & Omega The Birth of the Universe for cello solo」Op.70(1999)や、フルートまたはオーボエとピアノのための「オメガ・ケンタウリ Ω - Centauri for flute or Oboe and piano」Op.93(2004)という曲があります。彼がアルファとオメガに魅了されていたからこそ生まれた作品でしょうし、ケンタウルス座の作曲の際も、きっとこれらの天体のイメージが念頭にあったことでしょう。


Nearby Spiral Galaxy NGC 4945

 これはケンタウルス座の領域にある NGC 4945 という棒渦巻銀河です。私たちの天の川銀河とほぼ同サイズでよく似ているとも言われており、猛烈なエネルギーを有するブラックホールも存在します。


 シサスクのケンタウルス座のイメージは「啓発」。

 ケンタウルス座はその星座名だけでは想像できない驚くべき世界へと導いてくれました。ほかの星座もしかり、星座の領域に存在するものを探し出す作業そのものが、大いに「啓発」されることばかりです。


 シサスクのケンタウルス座の音楽は、高音域と低音域が美しく調和し、透明感にあふれています。5小節目からは楽譜が 3段になっていて、上 2段は左右の手でユニゾン(オクターブ)を演奏します。そのことはケンタウルス座の 2つの 1等星、 α ケンタウリと  β ケンタウリ を示しているように思えてなりません。時々、挿入されるパッセージは流星が煌くかのようです。一番下の段には、弦を指で押さえておいて鍵盤を優しく連打したり、弦の押さえる位置を奥の方にスライドして連打音の音色を変える内部奏法が記されています。曲の終わりには、音符が × 印で書かれています(下の譜例)。これはその音を出す仕草をするだけで鳴らさないように(Play without sound)という指示です。Mute current string と書いてあるシ(H)の音は、その音の弦を指で押さえながら弾きます。宇宙への扉を優しくノックするような音・・何の音かは、ほとんど分からなくなり、ケンタウルス座の音楽に、果てしなく遠い奥行きを感じることができます。



 シサスクは天体を実際によく見ることによって得られたことを大切な記憶として、単なる記録ではない五感で捉えた記憶として、音楽に残しているのだと思います。

 




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