32. くじゃく座 Pavo

孔雀座  Pavo

争いと和解の法則  
The Law of Unity and of Struggle between Opposites


 孔雀の羽のようでもある NGC 6744 は、天の川銀河よりも大きい渦巻銀河です。中心部の星は古く、青とピンクがかった螺旋状の腕には若い星が集まっています。直径は 17万5000光年、地球からの距離は 3000万光年です。



 NGC 6752 は全天で 3番目に明るい球状星団で、10万個以上の星があります。直径は 100光年、地球からの距離は 13000光年です。

Giant Galaxy NGC 6872

 小さな銀河との相互作用により変わった形をしている NGC 6872 は、天の川銀河の4〜5倍もの大きさがある巨大な棒渦巻銀河です。銀河の端から端までは 52万2000光年もの広がりを持ち、地球からの距離は 2億1200万光年です

 シサスクのくじゃく座のイメージは「争いと和解の法則」。

 このイメージからピンと来たことがあります。「相互作用銀河」と「球状星団」です。
「相互作用銀河」とは、2つの銀河が影響しあって変形した銀河のことです。重力によって引き寄せられたり、衝突して小さい方の銀河が剥ぎ取られたり飲み込まれたりして歪みができるのですが、不思議なことに銀河の中に存在する星々(恒星)がぶつかり合うことは稀で、やがて通り過ぎるか、ガスや塵が混ざりあって合体し、一つの大きな銀河へと成長するそうです。「球状星団」とは 10万から100万の恒星が重力によって、10光年以内くらいの範囲に球状に集まった天体です。どのようにしてできるのかは未解明ですが、銀河が暗黒物質やほかの銀河から重力の影響を受けるのに対し、球状星団は星の自己重力によって形を維持しているとのことです。
 くじゃく座の「争いと和解の法則」のイメージは、相互作用によって形が変わった銀河 NGC 6872、そして球状星団 NGC 6752のように、宇宙における衝突、通過(あるいは、すれ違い)や合体の法則から来ているかもしれません。

 音楽からも、宇宙で起きている様々な現象を感じ取ることができます。ペダルを徐々に踏み込んで(press step by step との指示)音を混ぜ合わせていくところは、宇宙の塵やガスが星の間をくぐり抜けて充満していく相互作用銀河の様相にも思えるし、鋭いアクセントと手の平で複数の鍵盤を打つクラスター(特殊奏法)は激しい衝突のシーンを表しているかのようです。

 実はこのくじゃく座の曲にはもう一つ、"Fishes" というサブタイトルが付いています。注釈によると、 Fishes とは「音楽における偶発的なミス」のことで、ミスタッチと思わせるような不協和な音に  (自筆譜では *印)が書かれています。10回の Fish が散りばめられていますが、これが単なるミスでなかったとしたら、何を意味するのでしょう。あくまで私の推測ですが、一つは何がきっかけで起こるかわからない、争いの「火種」のようなイメージではないかと思います。もう一つの見方としては、アボリジニの点描画からの影響ではないかと想像します。特に終わりの方で音が素早く跳躍して飛び交うさまは、そこら中に散らばる星粒にも似た点描のようで、正しい音なのかミスタッチなのか、聞いている人にはわからなくなると思います。文字を持たないアボリジニの点描画は、見る人の想像力でいろいろな形に見えることがあります。孔雀の羽の模様が魚に見えたなどということもあるでしょう。文字以上に伝わるメッセージがあるのではないでしょうか。
 創世期からの民族の掟(おきて)を守り、いまも生活スタイルを変えずに生きているアボリジニたちには、地上で守るべきこと、言い換えれば地球環境をどう守らなければならないかといったことも見えているといいます。

 くじゃく座の最後の音は、"Fish" とされる F ではなく、解決(和解)の音である  F# で終わることが望ましいでしょう。シサスクは、どちらかを選べるように ossia (「さもなければ」の意) と記していますが、自信を持って「解決(和解)」の F# を選ぶためには人類は多くの間違いに気づかなくてはならないと思います。生きるものには守るべき法則があるのです。調和した宇宙の営みがそれを教えてくれています。


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