34.コンパス座 Circinus

コンパス座  Circinus

ブラウン運動  Brownian Movement

 突然ですが、宇宙にブラックホールは何個あるでしょう? 

 答えは、銀河と同じ数の 1兆個です。

 ブラックホールは 20世紀初頭から渦巻型の銀河の中心にあると考えられてきましたが、光を発しない天体ゆえ、なかなか見つかりませんでした。20世紀後半になると宇宙にX線を放出する天体が見つかったことで X線天文学が発展、以降、ブラックホールの存在は次々と明らかになっていきます。

 上の画像は地球から 1300万光年にある「コンパス座銀河」の 2つの巨大なブラックホールを示しています。ブラックホールは光を発しない天体であり、X線もブラックホール自体からは出ていないので、これはブラックホールの周囲にある星からのガスの色です。ガスはブラックホールの強い重力に引き込まれてグルグル回って落ちていく過程で熱くなり、X線を放射します。そのX線源を観測できるようになったことで、今まで見えなかった画像が見えるようになりました。地球からの観測は難しいため、人工衛星で X線の発光源データを解析しているとのことです。

 下の画像はハッブル宇宙望遠鏡が 2000年に撮影した「コンパス座銀河」の画像です。銀河の中心部のブラックホールがいかに巨大か想像させられます。



  ところで 1兆個のブラックホールの中には、太陽の100億倍を超える質量のブラックホールが存在するといわれています。超大質量ブラックホールがどのようにして生まれるのかは、まだ大きな謎です。

 シサスクのコンパス座のイメージは「ブラウン運動」。

 ブラウン運動とは、気体や液体中にある微粒子の熱運動のことです。アインシュタインは「ブラウン運動が原子と分子の存在を明白に証拠づける」と論文に書きました。アインシュタインといえば一般相対性理論の「アインシュタイン方程式」ですが、実はドイツの物理学者カール・シュヴァルツシルトという人が「アインシュタイン方程式」を解いたことで、ブラックホールという光さえも脱出できない天体があり得ると予想したのでした。

 シサスクのコンパス座の音楽は、明らかにブラウン運動を音に表していると言えるでしょう。微粒子が激しく動き、時にぶつかり合うような音楽です。ブラウン運動は温度が高いほど、また粒子が小さいほど激しくなるといいます。シサスクがそのことと、熱量を上げて X線を放射しながらブラックホールへ転落する星のイメージを重ねていたとしたら、流石です!





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