35. ふうちょう座 Apus

風鳥座  Apus

調和  Reconciliation


 これは南半球のオーロラです。国際宇宙ステーションがマダガスカルの南東(インド洋)の上空を周回したときに撮影されたものです。オーロラというと北半球のイメージがあるかと思いますが、南半球のオーロラ(サザンライツ)は色が鮮やかで、全天が真っ赤に染まるようなオーロラもあるそうです。この画像は「宇宙と地球の境界」といわれるオーロラを見事に捉えています。



 ふうちょう座の領域には、目立つ天体はありません。この画像はアフリカ南西部のナミビアで撮影されたもので、美しいアーチを描く天の川が圧巻です。天の川の頂点の十字架はみなみじゅうじ座、その左はコンパス座、その下の小さな鍵のような形の星座がふうちょう座です。(赤色で表示してみました。)地上近くに 2つの雲のように見えるのは、大小のマゼラン銀河です。


 シサスクのふうちょう座のイメージは「調和」。

 ふうちょう(風鳥)の別名は極楽鳥。それは天からの遣いであるとか、風を餌にし、脚と肉がないとか、西洋の人にとっては幻の鳥でした。ニューギニアの人々にとっては、極楽鳥の羽は空を舞う魂で、世界の起源とも言われています。
 シサスクは物語の終わりに「極楽の鳥、風鳥は人間、そしてそのほかの生き物を地上から別の世界へと連れて行き、永遠なる宇宙と私たちを reconcile させる」と書いています。reconcile → )Reconciliation というサブタイトルは「調和」のほか「和解」も意味します。シサスクの心の中に南半球のオーロラのイメージがあるかどうかはわかりませんが、冒頭の NASAの画像は、極楽鳥の美しく鮮やかな羽のイメージと重なりました。昇天する時、地球と宇宙が溶け合うこの光を見ることができるでしょうか。
 シサスクによると、天の川にあるコンパス座は生きているもの全ての世界であるのに対し、ふうちょう座は天の南極と天の川の間の星の少ない領域にあって、先祖の魂が存在する世界であるといいます。アボリジニ伝説には、死者の魂は黒オウムの群れに付き添われて天界へ旅立つという言い伝えがあることが記されています。その魂は地上の人には見えないが、生前の面影があるそうです。


 シサスクのふうちょう座の音楽の前半は、コンパス座の曲と全く同じです。コンパス座からふうちょう座へ、いつ曲が移り変わったのかがわからないような仕組みは、命を終えた者が地上から旅立つ間に、徐々に変化していく様を表しているのではないでしょうか。曲の後半になると、ふうちょう座へと去りゆく魂が、宇宙と調和していく様子が描かれているようです。
 和音を無音で押さえることによって滲み出る共鳴音(ハーモニクス)は、魂に変わる瞬間、あるいは魂が宇宙と溶け合う瞬間に生まれる光のように思えてなりません。




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