36. とも座 Puppis

船尾座  Puppis

静けさ  Silence

M46 & M47: Star Clusters Young and Old 

 これはとも座の領域にある散開星団 M46と M47です。冬の天の川とともに見えるので「冬の二重星団」あるいは「南天の二重星団」とも呼ばれます。因みに秋の天の川をバックにした散開星団といえば、ペルセウス座の二重星団です。
 微細な星の集まりに見える方が M46で、双眼鏡では 2つの対比を楽しめるそうです。M46は 5400光年、M47は 1600光年です。


NGC 2440: Pearl of a New White Dwarf 

  NGC 2440は太陽の 1000倍の明るさで輝く 3600光年にある惑星状星雲です。中心に見える星は寿命を終えて爆発した後に残された中核部分で、白色矮星と呼ばれます。私たちの太陽も 50億年後には大爆発して、白色矮星になると考えられています。この白色矮星は表面温度が 20万℃もあり、恒星の中で最も高温といわれています。



  この画像では星がつくられる様々な段階が捕らえられています。左上にはいくつもの新しい星が既に形成されていて、誕生したときにまとわりついていた星雲は消散しています。一方で、左下にある星雲に囲まれた一粒の星はまだ生まれたばかりで、ガスの繭(まゆ)から抜け出そうとしています。所々にある真っ黒な部分では、新星が誕生しつつあり、右の方のガス雲は、誕生した星々からのエネルギーによって蒸発しながら輝いているのだそうです



 とも座の「とも」は漢字で「船尾」と書きます。船尾に対して船の頭は「船首」といいますが、船の世界では船首のことを「みよし」といい、漢字では「艏」と書くとか。
 昔、南天にはアルゴ船座という星座がありました。天の川はおおいぬ座から巨大なアルゴ船座を通って、みなみじゅうじ座に達しています。あまりに広大な面積なので、現在は 3つの星座に分けられています。その一つがとも座で、残るはりゅうこつ座です。
 上図は Wikipedia からお借りしたポーランドの天文学者ヨハネス・ヘヴェリウス(1611-87)による星図です。点在する大小の丸い玉は星で、背景にギリシャ神話に登場するアルゴ船が描かれています。シサスクも 3つの星座を合体させたアルゴ船座の星座図を描いています。


 シサスクのとも座のイメージは「静けさ」。次の曲、ほ座のイメージが「嵐」ですので、嵐の前の静けさのイメージが浮かびます。異変が起こる前の不気味な静寂・・もしその時、船上に居たとしたら・・・。
 シサスクは宇宙船に乗っていて、暗黒の世界に星だけが瞬く静寂の中をゆっくりと、1、2、3 と左右に揺れながら漂っていると想像してみましょう。揺れている間にどんな音が聞こえてくるでしょうか。


 とも座を構成する星の数は 11個。シサスクはそれと同じ数の下記の 11音を音列として使い、とも座を巡ります。(カッコ内のド# は前のド#とタイで繋がっています。


 ド#  (ド#)  ソ# ド# ファ ソ# シ ド# レ ミ ファ


 左から順に進み(1の矢印)、下降の際は右から順に逆行(2の矢印)、もう一度左から順に進みます(3=1)。その後、内部奏法によるアドリブを挟んで、再度、1〜3を繰り返して終わっています。連なる 11音がゆっくりとした船の揺れや微妙な傾きを表しているように思えませんか?

 中間部の内部奏法は、現在の譜面では「ハンマーより奥の弦を爪で引っ掻いて」とアドリブの指示があるだけですが、自筆譜では下のように路のような矢印で、引っ掻く部分を表しています。弦をはじくのではなく、低弦の巻線を逆撫でするように爪でガリガリ引っ掻くのですが、アドリブなので、複数の弦を数本の指で同時に引っ掻いたり、引っ掻く速度を変えたりしても良いでしょう。私はこれまで船が揺れた時にきしむような音のイメージで弾いてきました。実際、この効果音は、まさにそう聞こえるのです。



 

 下図はシサスク自筆によるとも座の星座図です。この領域に豊富にある星や星団、銀河が詳細に書き込まれています。LINNUTEE とはエストニア語で天の川のことです。-30° という点線が横切っていますが、この線はエストニアから見える南半球の星空の限界を示しています。「南天の二重星団」NGC 2440、2467 はこの限界線の上にあり、北半球では冬の天の川の見所となっていますが、これらが伝説の船、アルゴ船を浮かび上がらせるスポットライトのような存在でもあると考えると幻想的ですね。こうした光だけの世界もまた「静けさ」ではないでしょうか。





次回は視界の限界線を南下し、ほ座へ。徐々にアルゴ船の全貌が浮かび上がります。








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