39. きょしちょう座 Tucana

巨嘴鳥座  Tucana

さまよい  Wandering

Cloud, Clusters and Comet Siding Spring 

 きょしちょうとは、中南米のジャングルに生息する巨大なくちばしの鳥で、巨嘴鳥と書きます。夜空の鳥、ほうおう座つる座の南側に位置しています。

 きょしちょう座の領域で最も目につくのは小マゼラン銀河で、この画像で左半分を占めるぼんやりとした雲のような部分です。中央やや上に尾を引いているのは「サイディング・スプリング彗星」 Comet Sideing Spring で、2014年10月19日に火星に衝突する可能性があったといわれている彗星です。右にひときわ明るく輝く光の球は球状星団 NGC 104、左上にこれを小さくしたように輝いているのは球状星団 NGC 362 です。この一枚の画像で、きょしちょう座の領域の主な天体が映し出されています。


Globular Star Cluster 47 Tuc

 球状星団 NGC 104 は「きょしちょう座 47」とも呼ばれ、ケンタウルス座の「オメガ星団」についで、全天で 2番目に明るい球状星団です。数約万個の星で構成されており、地球から 15000光年の距離にあります。




 これはチリのアントファガスタ州 Antofagasta の火山の上空に浮かぶ大小のマゼラン銀河です。左が小マゼラン銀河で、その左には 球状星団 NGC 104(きょしちょう座 47)が明るい星のように輝いています。手前の水面に映っているのも感動的です。


 シサスクのきょしちょう座のイメージは「さまよい」。

 巨嘴鳥と名付けられたこの星座は、16世紀末、オランダの航海家によって設定されたということですが、88星座の中ではかなり風変わりなものが迷い込んだという感があります。

 シサスクのきょしちょう座の音楽を聴くと、「さまよい」の意味はさすらいではなく、「生死の境をさまよう」といったような不吉なイメージが浮かび上がってきます。
 前半はキツツキの種目でもある巨嘴鳥が、くちばしで何かを突くような音で、どんどん厚みと不協和度が増していきます。リズムは執拗な繰り返しで、血圧が上がるかのようにテンポアップ、金縛りのような束縛と最強の不協和音から抜け出るように生まれるのは、イ短調の主和音です。ffff の協和音の爆音で束縛は砕け散り、そう、苦しみは去るのです。視界に広がったのは何だったでしょう。暗黒の世界? それとも・・・?


 何かに怯えつつも後半の音楽は徐々にクールダウンし、徐々に我を取り戻すことができます。振り返ると、果てしなく広がる天の川のアーチに気づくのではないでしょうか。
 標高 4500m の別世界、チリのアタカマ高地 Atacama altiplano に立ち昇る天の川銀河の光景から、このようなストーリーを想像できました。巨嘴鳥が迷い込んだのは、もしかして、天の川のおびただしい星の中だったかもしれません。
 きょしちょう座はつつく音を時折反響させながら、小マゼラン銀河とともに地平線の向こうへと遠ざかっていくのでした。



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