41. さいだん座 Ara

祭壇座  Ara

増殖  Multiplication


  これはさいだん座で最も明るい球状星団 NGC 6397の中心部です。ここにある星はすべて、ほぼ同時に形成され、すでに 100億歳以上になっています。赤い星は寿命の大半が尽きている星です。しかし、永遠の若さを保っているように見える青い星もあります。その名も「青色はぐれ星 Blue Straggler」、星同士が衝突することによって誕生しました。星がひしめき合う球状星団の中心部では衝突もあり、お互いの重力で引きつけ合って連星を形成することもあるなど、まだまだ謎も多いそうです。

 ここには巨大な星形成領域である輝線星雲 NGC 6188(RCW 108)と、その左側に青い星の集まる散開星団 NGC 6193 が写っています。NGC 6188 での新しい星の形成は、NGC 6193 の熱くて重い星からの強い放射によって引き起こされていると考えられています。



 NGC 6188 にはこのような幻想的な光景があり、NASA画像では「さいだん座の闘う竜 Fighting of Dragons of Ara」と解説されているものもあります。中央の星雲の形が二頭の竜の闘う姿に見えるでしょうか。見え方は人それぞれかと思いますが、私はその部分よりも背景のセルリアンブルーの美しさに魅力を感じます。
 さいだん座さそり座の南、天の川銀河の濃いところに位置しており、古代ギリシャの人々はすでにその存在を知っていました。生贄を捧げようとしている祭壇とか、神々が天界の支配権をめぐって闘う前に誓いを立てた祭壇などといわれています。


 シサスクのさいだん座のイメージは「増殖」。

 巨大な星形成の領域をひたすら見つめているシサスクを感じます。死にゆく星がある一方で、ぶつかり合って誕生する星、引き合ってくっつく星・・まさに「増殖」です。

 シサスクのさいだん座の音楽は ppp のたった一つの音 ド C から生まれ、単旋律から重音の数を徐々に増していきます。楽譜は 3段譜に始まって、クレッシェンドと共に 4段譜になり、高音と低音は重力で引き合うような関係に思えます。上声部では星と星とのぶつかり合いやニアミス、発光現象を表すかのように激しさを増し、半音階でゆっくりと下降し続ける低音部は、巨大な重力でブラックホールへと吸い込まれるかのようです。クライマックス ffff では、遥か彼方に感じていた宇宙が目の前に迫ります。そして曲の最後では内部奏法による強烈な打弦。二度と帰ってこられない世界への祭壇の扉が開くのです。








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