顕微鏡座 Microscopium
けんびきょう座の領域に見つかっている天体はいくつかありますが、NASAの画像があるのは唯一この天体 Arp-Madore 2026-424 です。これは 7億400万光年にあり、2つの銀河が正面衝突している状態にあります。小さな銀河が大きな銀河に飲み込まれるというよくある衝突ではなく、ほぼ同サイズの銀河が衝突しているという珍しい状況を捉えた貴重な画像とのことです。青く若い星は顔の輪郭を形作り、銀河の核はまるで目のように見えます。2つの銀河は 10億から 20億年かけて融合するだろうと考えられています。気の遠くなる時間ですね。
なにより画像のアップが待ち遠しいのは、1990年代に発見されているという「けんびきょう座超銀河団」です。
シサスクのけんびきょう座のイメージは「優しい応え」。
一つ前のぼうえんきょう座でも書きました。
肉眼では見えないものを見るための望遠鏡と顕微鏡。その違いは何でしょうか。望遠鏡は手の届かない遠くのものを見る。顕微鏡は手中にあるけれども大きくしないとわからないものを見るものですね。「優しいタッチ」というイメージのぼうえんきょう座では、望遠鏡によって遠い天体に触れられるような感覚を得ることができたけれど、もしもその天体を手に取り、スライドガラスに乗せ、顕微鏡で見られたなら、もっと驚くべき発見=「応え」があるでしょう。それくらい遠い天体を知りたいというシサスクの願望が「優しいタッチ」と「優しい応え」というサブタイトルに込められている気がします。
シサスクのけんびきょう座の音楽は、ヘ長調の「トゥルクの歌」の余韻を引き継ぐのですが、打って変わってヘ短調の和音(下の譜例のf-m)から陰りをもって始まります。この和音にある「ラ♭(As)」や「シ♭(B)」は重要な意味を持っています。この後、何回かの転調を経て嬰ヘ長調 Fis-d になる時、「シ♭(B)」は異名同音の「ラ♯(Ais)」に変化します。さらに曲の終わりで、譜例のように嬰ヘ短調 fis-m 、ニ長調の七の和音 D7-d へと刻々と転調、最終的に嬰ヘ長調 Fis-d に戻るという美しい化学変化を起こします。
f-m Fis-d fis-m D7-d Fis-d
これはまるで「ラ」という音を詳細に見るために、顕微鏡で焦点を微調整しながら覗いたようでもあります。ぼうえんきょう座は「ファ(F)」を主音とするヘ長調で始まって終わり、けんびきょう座は「ファ(F)」を主音とするヘ短調で悲しげに始まりつつも、希望の光を感じる嬰ヘ長調の主音「ファ♯(Fis)」で終わります。「優しいタッチ」に対し「優しい応え」で終わる 2つの星座の関係は、繊細な調性の移り変わりによって表現され、「優しい」という言葉の意味合いの素敵さを感じさせてくれます。
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